休日

 日暮れ時の商店街ですれ違った高校生は、見るからに聡明な顔をしていた。商店の看板を見ながら歩いていたのか、視線は少し上を見ていた。日曜日のその時間に学生服で歩く理由は何だろう。ほどなく自転車の2人連れの女子高生が、僕を追い抜いていった。これも又制服姿だった。  解放されるべき休日に、制服姿で行動しているのにはそれなりの理由がある。何か大切な日常、非日常を問わず出来事があるのだろう。僕はその姿がとても好きだ。前に向かって進んでいることがひしひしと感じ取れるから。努力という僕が一番苦手だったことを現役で引き受けている世代だから、神々しくさえ思えてくるのだ。  商店街を抜けたところにある施設は、カレーのいい匂いが立ちこめていた。窓越しに室内の様子がよく見えた。ホームレスの人達とまかないをする人達が一緒に食事の用意をしていた。部屋の隅には布団類が積み重ねられていた。善意の食事と善意の寝具で、彼らはもうホームレスではない。窓に水滴がつくくらい中は温かそうだった。若い女性のエプロン姿が墨絵に落ちた絵の具のように、鮮やかだった。  日常の景色の中にとけ込んだ、ありふれた光景さえ、このように感動を与えてくれる。決して華々しくはない、どこにでもいる青年達なのだろうが、すれ違う人間にこのような心地よさを植え付ける事が出来るのは、持って生まれたものか、沢山愛され大切にされたおかげか、多くを学んだせいか。  ひたすら歩けば身体がぬくもって温かくなるのかと思ったが、いつまで歩いても手先、足先が凍えるようだった。でも、すれ違う景色の中に温かい風も吹いていた。