垂直

 大切なことには気づかないが、どうでもいいことばかりを見つけてしまう。僕がものにならない大きな理由だ。 かの国の女性達は、自転車に乗るときは背筋を伸ばし、まるで地面と垂直の姿勢のままゆっくりと漕ぐ。それが何となく見ていて違和感を覚えるのだ。何処も間違っていないのに、むしろ良いことなのだろうけれどしっくりこない。恐らくその姿勢は日本人の間ではあまり見かけない光景なのだ。どちらかというと日本人は前傾姿勢だ。少しだけ前に体を倒している。スピードも少し速いような気がする。  ついでに言うと、白人はもっと前傾姿勢だ。風の抵抗を防いでいるのか、だらしないのか知らないが、ほとんど胴体が地面と平行になるようにハンドルを下げている。その姿勢が何かの合理性を追求したあげくなのか分からないが、風景を楽しんだり会話を楽しんだりする姿勢ではない。  僕は白人が嫌いなわけではないが、僕ら黄色い肌の人間達とはだいぶ考え方や風習が違う。これもどうでもいいことに属すると思うが、白人は腕立て伏せをするときに足を開く。日本人は足を閉じる。ちょっとしたことだが、細部に渡って品がある。足を開いて腕立て伏せをすると閉じてするよりも随分と安定して出来るが、やはり品はない。  日本人は合理性より品性を重んじてきた。ただ今や黄色い肌なのに白い肌の人種のようになりたがっている。だから白い肌の人間にはめっぽう卑屈で、黄色の人達にはめっぽう強い。政治家から庶民まで。