コーヒー

 人生相談か漢方相談か分からなくなるくらい話が弾む。薬局で話が弾んでも仕方ないが、もうそう言った関係になってしまって、この女性も又僕の愛しい大切な子だ。30歳を過ぎて子と言うのもおかしいが、懸命に回復を願ってお世話した女性だから僕にとってはやはり子なのだ。年齢も丁度僕の子供と言っても丁度合うくらいだから余計そんな呼び方をしてしまうのかもしれない。 丁度僕の娘が取り寄せていた九州の美味しいお菓子があったので食べて貰おうと思った。洋菓子だからコーヒーが合うと思ったが、彼女は以前コーヒーを飲むとパニック症状が出ていたことを思い出して、恐る恐るコーヒーを飲んでみるかと尋ねた。すると何と彼女が「ガボガボ飲んでいますよ」と答えたのだ。日に何杯も飲んでいるらしい。これは予期せぬ答えだった。そしてこれこそが完治の証でもある。もっとももう随分前に待望の職種に就職も出来ているし、高速道路さえも運転できるみたいだから、日常生活で困ることはなくなっていたが、大好きなコーヒーが飲めないことは、心の安らぎを得る機会を失うだけでなく、結構不便だったそうだ。色々なところでコーヒーを出される機会は多い。そのたびに断ったり、代用品を用意したりでいらぬ気を遣っていたらしい。これは経験者でないと分からないことかもしれない。 僕はガボガボまでは飲まないが、それでも日に2杯は必ず飲む。ほとんど眠気覚ましのために飲んで、情緒を楽しむという境地にはなれないが、音楽に、読書に、お喋りに、議論にコーヒーが欠かせない人も多いだろう。彼女が何のお供にコーヒーをしているのか分からないが、無駄に生活の質を落とすことがなくて良かったと思った。コーヒーを飲んでいることを嬉しそうな顔で教えてくれたのがとても印象的だった。