細々

 甥に漢方薬を大学で勉強するのと尋ねると、なんかそんな授業があったような気がすると答えた。余りぴんと来ないらしくて、薬理学の中の一こまであったかなあと言うくらいの印象で、どんなことを勉強したのと聞くと「なんか4つの要素で出来ているというような話だった」と漠然とした答えで、どう見ても建前でやっているくらいの内容だとこちらは理解した。4つの要素と言いながら具体的には言わなかったから、どうせ余り本気で聞いていないのだろう。僕もその4つの要素が何か分からないから、それ以上話を進めなかった。若い医者は漢方を学んで出てきていると言うけれど、まだこの程度だと理解した。個人的な興味で深く掘り下げて勉強する人を除いては、彼の程度がいたって標準なのだろう。  と言うのは漢方の相談に来る人はほとんど病院の薬を飲んでいて、その前提で薬を作る。神経質な人はその薬を医師に見せるのだが、必ずしも、特に年齢の高い医師は好意的ではない。彼らが全く漢方薬について知識がないからだろうと思っていたが、医師の卵に尋ねてみても、若い医師が必ずしも漢方薬に精通しているって事もないことが分かった。気・血・水や陰陽五行の簡単な尺度は学ぶのだろうが、そんなもの漢方薬の知識の氷山の一角にもなり得ない。若い医師から闇雲に漢方治療を否定されることがないから、知識が増えたのかと思っていたら、自分たちが授業を受けた医学を否定することが出来ないと言う意味だと分かった。勿論僕たちとしてはそれで十分なのだ。折角改善していた人が、医師のささやきで治療を断念しないといけなくなる人も多い。もったいないなと思いながらも、格段に信頼度の低いこちらは諦めなければならない。苦々しい体験はこちらが腕を上げるに従って増えてきた。  レアアースの次は漢方薬とも言われている。大切な資源だから国産でまかなえるようになるまで無駄に使ってはおれない。必要な人だけに正しくってのが大原則だ。売らんが為の法律違反すれすれのコマーシャルなんてもってのほかだ。又点数稼ぎの保険診療も又もってのほかだ。所詮地味な医療だから、細々と続けていくくらいが一番いい。