クロネコヤマト

 数年ぶりにビールを飲んだ。クール宅急便で北海道の地ビールと肉の加工品のセットが届いたから。どのくらいの価値があるのか分からないが、僕には豪華に思えた。普通に売っているものとは見るからに趣を異にしていて、手作りで見た目も全然違う。名前を見てみないとそれがベーコン、これが何々と分からなかった。食べ物に関しても圧倒的に無知だから、目にしたことがないようなものはすこぶる豪華に見える。 恐らく息子にこんな手間を掛ける時間はないだろうから、嫁が選んでくれたのだろうがとても有り難かった。元気に仕事に従事し、少しでも多くの人を救えるならそれだけで充分で、息子に何も望んでいない。ただその生活が彼の家族にとって快適なものかというとそうではないだろう。不在がちと言うより、眠るためだけに帰ってくるような生活ではないのか。働き虫ではないだろうが、働かされ虫にはならざるを得ないだろうから。  僕は孫にとっていいおじいちゃんではない。足繁く通って目を細めて成長を見まもるようなタイプではない。毎晩神様に孫達の健康を祈るが、それが全ての関わり方なのだ。僕には職業的な深い関わりの人達が沢山いて、そちらを圧倒的に優先してしまうのだ。嘗て僕の父がそうであったように。  母が「私は幸せじゃあ、独りで住めるから」としみじみと僕に言った。まだまだ元気だから、一人で自由に暮らせることを楽しんでいる。別に西洋にかぶれているわけではないが、我が家はどの世代も独立していて、一見お互いクール宅急便のように見えるが、それはそれでいいと思っている。所詮名前も同じヤマトなのだから。もっとも我が家はドラネコヤマトだけれど。