ついにスタートを切ったのだと感慨深い。最初に配属されたのが救急救命の部署らしいから、かなり過酷だろう。もっともまだ新米だから余り役には立たないだろうが、採血くらいはさせてもらっているらしい。後は小間使いか。そうやって、やがて立派な医師に育っていくのだろう。  朝は7時には出勤し、立ちっぱなしで昼食も4時頃になると言う。その後9時までいて帰るのだが、何を食べているのか気になる。どうせろくな食事はしていないと思っていたがやはりコンビニ弁当レベルだった。若いからなんとか体力も持つのだろうが、過酷な労働ではある。使命感とやりがいがなければなかなか続かないだろう。それでも学生よりは数段楽しいはずだ。人の役に立てるのは何よりも喜びだから。  シャワーは冷えるから風呂に入れと、まるで親のようなことを言いたくなるが、両親とは別の意味で僕にとっても誇りなのだ。謙遜を守り通し立派な医師に成長して欲しい。循環器をいずれ標榜するみたいだから、その道で才能をより開花させて欲しい。多く持っている人は、多くの良いことが出来る。それは経済でも才能でも同じことだ。多くを与える人になって欲しい。  その地の桜はどのくらい咲いているのか分からないが、あなたには満開で咲き誇る花弁よりも、春を呼ぶ風でいて欲しい。