ネット販売

 ネット販売規制について思うことがある。ワンクリックで薬を買える業者と、僕たち昔ながらの薬局を厚労省の役人も混同しているのだと思う。寧ろもう僕たちの形態は目に入っていないのかも知れない。都会では同業者を捜すのに苦労するから。あるいは規模が小さ過ぎて、とるに足らないと思っているのかも知れない。  薬剤師会にしても同じことが言える。今多くの会員は、医院の前で調剤専門の店舗を構えている人達だ。昔ながらの薬局の経営者は比率からすればかなり低い。そんな薬局を利用する人達に目が届かないのも当たり前かも知れない。そもそも医院の門前に薬局を作ることは違法すれすれなのだ。医薬分業とは、精神的にも医院と独立していなければならないのだが、こじつけで同じ敷地以外ならいいなどととんでもないことを口実で見つけてしまって、それがまかり通っている。本来なら医師の処方を監査する役割を担うべきだったのだが、今どのくらいの薬剤師が医師に意見が言えようか。単なるミスを指摘するのは簡単だが、不必要に見える処方まで指摘することがいったい経済的に隷属している薬局に出来ようか。処方箋を回してもらえばかなりの収入が得られるのだから、その権益を捨てるほどの勇気や正義感は持てと言う方が難しい。一般の方は驚くかも知れないが、処方箋で目薬、例えば炎症をとる原価101円のものを患者さんに使用方法や副作用の文書を添付して渡せば、わずか数分の作業でコンビニなどで働く人の時間給を、いやそれ以上を稼ぐことが出来るのだ。なるほど時には1時間くらいかかってしまうような難しい調剤もあるが、それを帳消しにしても余りある。下品な言い方をすれば今こんなに美味しい仕事はないのだ。  貧困とか派遣切りとかの報道に接するたびに居心地の悪さを感じてしまうのはこういった理由かも知れない。多くの人が困窮しているときに、パイの取り合いに終始する業界に属している一人として、何処にも属せず何にも主張できない人達の哀れさが心に突き刺さる。