舞台

 貴女が突然僕の前に現れたのは、去年の9月5日です。それを知ってか知らないでか貴女が再び来たのが今日ですから、まさに丁度1年ぶりの再会になります。あの時貴女はセーラー服でやってきた。学校に行けなくてうちに来たのでしたね。貴女は幼くてとても小さな女性のような印象を持っていました。ところが今日貴女が薬局に入ってきたとき、大人のように見えたことと、身長まで伸びて、大きな女性のように感じたのは何故でしょう。それがまず一つ驚いたこと。もう一つは、貴女がまだ大学に行っていたことです。後者の方は不安なメールが多かったのでもうてっきり辞めているものと思っていました。ところが貴女がつらいながらも大学に通っているのを知ってとても嬉しくなりました。今日は薬剤師が一人多かったので一杯話が出来ましたね。これも何かの縁ですよ。貴女の話を一杯聞くように何かの力が働きかけてくれたのかもしれません。おかげで僕も新しい貴女の情報が入ったし、よりいっそうの治し方も気が付きました。過敏性腸症候群は治るもの。僕の薬局の中にいたらそれが信じられるでしょう。これからは貴女が一番苦手な避けている空間で克服していきましょう。出来ないはずがありません。完治への通らなければならない道ですから。  自分の薬を自分でつくってどうでした。楽しかったでしょう。一杯の生薬が貴女を解放してくれますよ。これだけの薬草とこれだけの手間で薬は出来ます。治りそうでしょう。自然に備わっている貴女みたいな若者の治癒力を信じましょう。そしてこれからは遠慮しないで、しばしば遊びに来たらいいです。夢もしっかり聞いたからそれに向かっていきましょう。夢を持てない世代からしたら、うらやましい限りですよ。だから応援したくなるのです。  薬をつくっているときに気が付いたのですが、さすがに背筋が伸びて綺麗な姿勢でしたね。なかなか難しいのですよ。努力が生きていますよ。いつか貴女が舞台に立つのが見れたらどれだけ嬉しいでしょう。貴女のように若い女性が、振り返った過去の重みで涙するのを僕は受け入れられません。笑顔が似合う貴女です。貴女を大切に思う人間が電車に乗れば1時間ちょっとの所に住んでいることを忘れないでね。