満月

 太陽が隠れるのを待っていたかのように、黄色い大きな満月が山の端に登った。電灯の明かりにも勝てないような月の光だが、晩秋の空気を引き締めて確かな存在感がある。多くの人がそれぞれの思いでこの月を眺めているだろう。沢山の救いを求めているのに手を差し伸べられない人、満たされているのに多くの人が手を差し伸べてくれる人。関心が目の前を無慈悲に通過し、ある種の人達に集中する。無関心の足音は早足で遠ざかっていく。この月が、冷たく輝く頃、雪は積もり、公園の水道の蛇口は凍り付く。暖房もなく、蓄えもなく、助けを求める人もいない。豊かな国の中にも残念ながらある風景なのだ。