不安

 納車日を過ぎても娘夫婦の車が来ないから、結構ルーズなもんだなと考えていた。余りにも故障が続いたのが理由で、決して消費税を意識して買ったのではないけれど、時期が時期だけに、なかなか手元に届かないと聞いていたが、4月に入ったらすぐの約束のわりには、月が変わっても届かなかった。1ヶ月前にまるで関心がないが如くに依頼したのだが、いざ納車の日が近づくと本人達は気になりだしたみたいで、それまではほとんど興味を見せなかったのに、「まだかな」と言い始めた。そこで僕が会社に電話をして、具体的な日時を聞いた。すると「いつでも持っていける用意は出来ているんですけれど、来週の火曜日(8日)辺りは如何でしょう」と提案された。こうなれば早いほうがいいからそれ以前でもいいというと、8日にさせて下さいと言われた。手許にあるのに持ってこない、ピンとこなかったがこちらがもって帰るわけにはいかないので従うしかない。  そんな話を偶然買いものに来た整備工場を経営している人に漏らすと「良い日を待っていたんじゃろう」と答えた。良い日と言われても誰によい日か何によい日か分からなかったので「良い日って何?」と尋ねると「カレンダーを見てごらん、8日は大安じゃねえ?」と教えてくれた。見るとなるほど大安だ。現代科学の先端を行っている車が、よりによって縁起を担ぐとは思わなかった。  「我が家はそんなこと気にしないからどうでもいいのに。それよりも早く持ってきてくれた方がいい」と言うと、「結構拘るお客さんが多くて、今でも日を見るんじゃ」と教えてくれた。
 大安という言葉がいつの時代からあるのか知らないが、いつの世も心の奥底に不安を抱えて暮らしているんだと思った。