嗅覚

 「昨年12月、CT検査での放射線被曝により癌がどのくらい増えるのかを、シミュレーションモデルを使って求めた研究結果が発表された。それによれば、2007年の1年間に米国民が受けたCT検査により、将来、約2万9000人が癌になる計算だという。これは、米国で毎年発症する癌の約2%に相当する。こうした“警告”が出される背景には、CT検査が米国の医療現場に急速に浸透してきたことがある。米国で年間に行われるCT検査は、1980年は約300万件だったが、2006年には約6200万件に増えた。1回の検査に伴う被曝線量は、胸部単純X線検査(前後方向)は0.01mSv(ミリシーベルト)であるのに対して、成人の腹部CT検査は10mSv。単純計算で、腹部CT検査を1回行うと、単純X線検査1000枚分の被曝を受けることになる。これは米国での話であり、日本は関係ないと思うのは早計だ。冒頭の研究と行ったのと同じ研究者は2004年に、X線検査と発癌との関係を、日本を含む先進15カ国で比較した結果を発表している。それによると、人口1000人当たりのX線検査は、米国が962回だったのに対して、日本は1477回と約1.5倍。X線検査による発癌の推定数も日本が最も多く、年間7587人だった。しかもこの推計値は、日本におけるCT検査が他の先進諸国と同程度として計算したもので、日本の実態を考慮すると、年間9905人に及ぶという注釈が付けられた。“CT検査大国”は、米国よりむしろ日本なのだ。」 洪水のように情報が毎日入ってくる。僕らの所に入ってくる情報は当然精度が高い。もし上記のような情報を一般の方が見れば恐ろしくてCT検査なんかできないのではいか。当然僕は恐ろしいから、余程のことでないと検査を受けるような選択はしない。得るものと失うものを天秤にかけて選択する。日本の医師にアンケートした結果では、患者の放射線被曝について考えると答えた人は半数にも満たない。それよりも被爆自体に無知か無関心の人が意外と多いらしい。となると自分を守るのは自分でしかない。医師は目の前にある病気を治そうとして懸命に、又善意でCT検査を勧めるのだろうが、何年後かの結果には当然責任を持たない。  上記のようにCT検査大国に誰がしたのだろう。そうすることによって莫大な利益は誰が手にするのだろう。そうした推理を働かせれば本当のことが見えてくる。昨今の新型インフルエンザやテレビなどのマスコミでやたら効果を煽る健康食品についても、同じ推理を働かせれば正しいことが見えてくる。患者のためという美辞麗句は怪しげに響く。うまい汁を吸っている人達が恐らくうじゃうじゃしているのだろう。やたら恐怖心を煽られ自分の身体を差し出して、自分が稼いだ蓄えさえ差し出して、うまい汁を吸わせてあげている。哀れな善人達は、金で健康や幸せが買えると信じ、逆に金で健康や幸せを与えている。過度の治療も過度の健康食品とやらも、治療を受けたり飲んだりする人が健康になるのではなく、治療を施す側や売る側が健康になり、そのあげく幸せになっている。皮肉なものだ。持ってうまれた猜疑心が時に役に立つのが現代だ。うさんくさいもの程輝いているから、さび付いた嗅覚では太刀打ちできない。人格を疑われても我が身を守るふてぶてしさが必要だ。