結婚

過敏性腸症候群の相談で近隣の市からやってくる子がいる。今日その子と話して感じたことをひとつ。  話の中で「結婚している人もいるのですね」と、彼女が言った。彼女は、この病気で英語の先生になるのをあきらめた子だ。教育学部に行きたかったのだが、おそらく大学には行かなかったのかな。小柄でとてもキュートな感じ(本当は僕はキュートと言う意味をよくは知らない)で、本来ならとてももてそうな子だ。その彼女がいみじくも、縁のない世界の話しのように問題を提起したので、僕の拙い恋愛論を伝えた。結婚観かな。どちらにせよ、余り得意ではないが、恋愛対象の世代の親としての立場でものを言わせてもらった。極普通の男か、或いは男らしい男はまず、相手に、少しだけ成績が悪く、少しだけ気が弱く、少しだけ体調不良をもって、少しだけ経済的に劣る人を選ぶだろう。男は本能的に守って上げるべき人を好む。自分が守らなくてもいいような人を、好きにはならない。逆に女性っぽい男は、この逆の人を好きになる。自分を守って欲しいと思うから、強くて自立した相手を選ぶ。強い女性はほとんどおとなしい男性とくっついている。婚期を迎えた息子が、貴女を連れてきたら僕はすぐにでも許すと彼女には言った。僕の息子は実際には奥さんもいるし子供もいるので権利はないが、仮の話しとして、舅の価値観からすると、貴女は歓迎されるだろうと言った。これは彼女を慰める為に言ったのではなく、30年薬局をやっているとかなりの人間を観察できる。その経験から導き出したものなのだ。  僕のところにはもう随分沢山の方が過敏性腸症候群の克服の為に泊まりにきたが、こんな女性を恋人に、或いは奥さんにすれば男も幸せだろうなと感じることが多い。このトラブルの為に「幸せ過ぎない」のがいい。勝気で攻撃的なのはよくない。もし、恋愛願望、結婚願望があるなら、どんどんしたらいい。男は単純だから、相手のおなかが鳴ろうが、トイレにしょっちゅう行こうが、体臭がしようがそんなものほとんど気にしない。ただ、軽蔑さえされなければ万歳なのだ。  彼女はもう少しで完治するだろう。やってくるたびに娘にひとつ質問をし(僕はそのことには関わらないことにしているから、具体的には何を相談しているのか知らない)見違えるくらい明るい表情で帰っていく。表情から暗さが消えてとても明るい素敵な表情になっている。もう先生にはなれないだろうが、以前から希望していたものに挑戦しはじめたらしい。早く完治を一緒に喜びたい。