天空人水地

 勉強会などで都市部に行き、駅に降り立つたびに僕は思う。「ああ、この街では、僕は人を治せない」と。僕の力量でもない。相性でもない。何でも揃うと言われるところで、実は大切なもののほとんどがないからだ。何も揃っていないことが明らかだから。  天・空・人・水・地。あなたのすんでいるところを考えて欲しい。もしこれらが満遍なく揃っていたら、それこそ何でもある町なのだ。もしこの中の幾つかが欠けていたら、何でもある街ではない。歪な住環境ということになる。  天、真っ黒な天体に無数の輝く星達が見えるか  空、青空がまぶしいほどに輝くか。太陽が植物に命を与えているか  人、心優しい、勤勉で謙虚な人が回りで自然に暮らしているか  水、河や湖や海がすぐ近くにあるか  地、植物が根をはり、虫が這い、人が歩く大地があるか 自然を構成、いやいや人の内なる宇宙までも構成している要素が揃っているところは幸せ。このバランスがないとなかなか自然治癒力には恵まれない。その不自然を押しのけて治す力は、現代医学にも漢方薬にもない。いくら化学の発達を待ったとしても、自然の神秘の前では、無力なものだ。  自然の神秘の力をいただいて僕らは仕事をしているに過ぎない。僕らが治すのではなく、皆さんが本来持っている素晴らしい自然治癒力を呼び起こすだけが僕らの仕事かもしれない。駅から出たところで迎えてくれる高層ビルを見る度に、勉強がすんだらすぐ帰ろうと思ってしまうのだ。