ひとり尼崎にて

 僕を見下ろすな都会のビル 口をあけるなマンホール  排出された嫌悪は アスファルトに埋められて  歩道橋の下で笛吹く警察官  幾何学模様の錯乱にやっと酸素を見つけたり 

 公園の死角で手を差し伸べるな浮浪者達  僕は鳩の餌になって 転がっているのではない  曇天の寒空を眺め 冬の涙が届くかどうか  見届けたいと思っていただけなのだ

 砂に覆われた光合成  産み落とされた失望 育まれた絶望  葬列を飲みこむ 排気の爆音  煙突から落下する寒風に やっと酸素を見つけたり