ものまね大賞

 世の中本当にうりふたつの人間がいるものだ。親が言うのだから間違いないし、職場でも言われているらしい。この1週間、僕は毎晩はらはらしながらテレビを見ていた。アタックが成功するたびに、何故かほっとし、失敗するたびに申し訳ないような気分になった。交替でコートの外に出されたりすると、監督が憎くなったりする。息子は182cmしかないから、おそらく2m近い彼から言うとちょっと小ぶりなのだろうが、正面はもとより、横顔も然り、後ろ姿まで似ているのだ。果ては視線を含め多くの仕草まで似ているのだ。  息子は右利きだが、彼は左利きだ。息子も高校大学とバレーをしていたから、似たようなユニフォーム姿が僕の目にも残っていて、鏡に映して遠景を見ているような錯覚に陥る。似ているだけで感情を移入し一喜一憂している姿はこっけいだろうが、親というものはそんなものなのだ。本能の中に一番大切なものとして植付けられている。理解とか、勉強とか、そんな後天的なものではない。遺伝子の奥深いところに大切に受け継がれているのだ。  もしものまね大賞に、山本隆弘そっくりさんが出て実際にバレーをしたらたら僕の息子と思っても間違いではない。その時は僕がパスの相手をしようと思っている。