挿絵

 夕方なんとなく調剤室から外を見たら、かすかに山際に夕焼けの残査が残り、民家の屋根が切り絵のようにシルエットをなしていた。民話に添えられた挿絵を見ているようだった。その光景が、今日ある人からいただいたメールの内容と重なり、僕の心から離れなかった。  「喜びを共有出来る人がいないのと、哀しみを共有出来る人がいないのとでは、どちらがより孤独なのでしょうね。その若さで背負った苦しみを、田んぼの畔にそっと降ろしてくれる日に焼けた皺だらけの暖かい手は伸びてこないのですかね。朝もやに載って優しい声は聞こえてこないのですかね。あなたを大切に思う人がいて、あなたが大切に思う人がいる。そんな当たり前の光景が、池の面に投げられた小石ひとつで消えるのでしょうか。地図を広げて目を閉じれば、見えないものが見えてきて、見えていたものが見えなくなる。悲しみに耐えれないほど時は残酷ではありません。僕は、いつかあなたが嘗てのあなたのそばに立ち、優しく抱擁する光景を見たいと思います」