余力

 なんじゃこりゃあ!あの努力は何の意味もなかったのか。高所恐怖症の僕が、脚立を伸ばして壁面に折角2日間にわたって防水スプレーを吹きまくったのに。
 最初の一吹きで、臭いと刺激が強いことに気が付いて、長袖の服を着て、ビニール袋をかぶって、簡易の防護服を作って頑張ったのに、雨が降り出して10分もしたら、以前のように漏れるべきところから漏れ出した。台風が九州にある時でもこの程度だから、最接近してきたらどの程度の雨漏りになるのだろ。
 そもそも鉄筋で雨漏り。屋根は大丈夫なのに、壁の防水塗装が数年で機能しなくなる。設計士さんに当初教わったのに、若くて想像力にかけていた僕は、数年ごとに多額のお金が出て行くことなど想像もできなかった。最初2回は塗装屋さんに防水加工をしてもらったが、数年ごとに車を買うくらいの出費はもう嫌になり、止めた。
 だから風にあおられて横から降る雨にはめっぽう弱い。すぐに壁からしみ込んだ雨が、一部の天井から落ちて来る。毎回同じ場所だからバケツを置いて凌げばいいかもしれないが、天井の張り紙がはがれて垂れ下がり状態になって来た。運良くこの数年台風が来なかったから、あえて手を付けなかったが、さすがに今回のように大きな台風が近づいているとなると、何か手を打っておくべきだと、不器用この上ない僕でも考えた。そこで見つけたのが、壁面にも使える防水スプレー。
 あわよくば、運が良ければ、そう言った枕詞で数日過ごしたが、あわよくも、運良くもなかった。当然の成り行き。数百万掛かるものが3000円で済めば塗装屋さんはいらない。
 ただし、この期に及んで進路予想を繰り返して見ている僕には、終の棲家でも年に数回しか起こらない雨漏りのために、数百万円使う余力はない。

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