倹約

 倹約が裏目に出た。根が貧乏人根性だから、専門家の声すら疑っていた。
 朝から天気がいいから、2階の窓を開けて空気を入れ替えようとした。当然エアコンも切った。外の空気を入れれば涼しくなると思ったのかどうかその時の判断基準がよく分からないのだが、当然心地よさを求めの行動だ。ついでに3階に上がったときに、3階のエアコンも切った。
 薬局の仕事は9時からで、当然エアコン全開で仕事をするのだが、患者さんを応対し、漢方薬を作るとTシャツの胸のあたりが、汗で濡れた。当然正面から見れば患者さんも分かるくらいだ。私のためにこんなに汗をかいてまで薬を作ってくれるんだと、誤解を誘うことが出来るほどの汗のかきようだった。
 なんとなく今日はこの夏一番暑いなどと、悠長なことを考えていたが、だんだんしんどくなって、まるで家の中で発症する熱中症かと思われるくらいだった。慌てて冷やしておいたお茶を飲んだがあまり元気は回復しなかった。丁度その時、千葉の姉から梨が届いたので、すぐに切って食べたが倦怠感は回復しない。甘くて冷たいものは結構こういった時に貢献してくれるのだが、届いたばかりの梨だから体を冷やすことは出来なかったのだろう。
 暑くてしんどいなと漏らすと妻も気が付いていたみたいで、そしてその理由に気が付いたみたいで、急いで上がって行った。この夏初めて2階と3階を冷やさない時間を僕が作ってしまったみたいで、階上を冷やしておくべき理由を教えてくれた。こんなに違うのかと実感できるくらい1階の空気もやがて普段通りに冷え始めた。
 電気料金の節約行動として、急に冷やす時に電気をよく使うから、ずっと点けておくべきだと専門家が解説していたが、倹約を美徳に育てられた人間にはピンと来なかった。確かにしんどくなってから慌てて設定温度を下げ風量を強くしたが、そうした行動こそ避けるべきらしい。穏やかにいつも冷やしておく方が節約になる。そんな受け入れがたい事実をやっと受け入れられるように仕向けられた経験だった。
 何事も自分で経験しないと、人様の助言などブロッキングしてしまう。我ながらいやなタイプだ。機械など、僕の弱い所は滅茶苦茶分かっているのだが、この貧乏人根性が邪魔をする。

https://www.youtube.com/watch?v=oBO33oRYkHQ