20年くらい前に、バレーボールをするにはもう限界の肉体になった。町民体育館の硬い床の上を25年間飛び続けたのが災いしたのか、腰と首を傷めてしまった。ただ仕事は1日も休めないから、マッサージチェアの立派なものを買い、毎朝それで体をほぐしてから動くことにしていた。半年前に壊れるまで、1日も休まず起きてすぐ使った。新聞を読みながら、マッサージチェアに腰掛けるのがルーチンだった。
ところが役に立たなくなったマッサージチェアは超粗大ゴミだ。床の上を回転させるくらいしか移動させれない重量で、いったい何人でこれを2階から降ろすのだろうと思いながら、廃棄の契約をケーズデンキでした。
今日が約束の日で、現れたのは若い2人で上下黒づくめの男性。上は半そでのTシャツ、下は黒色のズボン。
一目見て納得。二人とも、体格がよく腕も足も太く、シャツやズボンがはちきれそうだった。衣服越しに筋肉の形が分かる。胴体もとてもがっちりしていて、僕の1.5倍は肩幅もある。すぐに思い浮かべたのはウエイトリフティングの選手。ただ今思えば、柔道の方が近いかもしれない。恐らく二人とも100㎏は越えていると思うが、身のこなしがとても軽やかだったから。
正社員か、こうしたときだけの契約か分からないが、めちゃくちゃ適材適所。こんなに体格に恵まれている人もいるんだと、ひょっとしたらまじかで見た初めての人種かもしれない。「気持ちのいいくらい」「思わず、あこがれそうなくらい」「格好いい」そういった印象を持った。
肝心のマッサージチェアは、急な外階段もものともせず、二人で抱えて降ろしてくれた。「同じ人間には見えない」が僕の結論だが、きっと向こうも思っている「同じ人間には見えない」と。このひ弱さ故に。