郷愁

 平日のその時間に、そこにいることは不可能だ。ただ有難く、今日は枯草を燃やす香りに浸っていた。
 風がないお陰で随分と温かく感じる。時折煙をなびかせるが、体感をくすぐるほどではない。
 ふと山の上から、トランペットの音色が聞こえて来た。中腹にある家のどこかで吹いているのだろう。決して上手ではなく、さしずめ中学生の吹奏楽部員が練習している程度だ。しかし、集落全体に聞こえるくらいの遠慮のない吹き方に、一瞬時代錯誤に陥った。僕が牛窓に帰り、正に中学校の前で仕事に精を出していた頃から、夕方になると聞こえてきていた音色だ。上手ではないが、何か懸命さが伴って聞こえてきた音の復活だ。
 いつ頃何を理由に聞こえなくなっていたもか分からないが、恐らくクレームが出たのだろう。僕自身も中学校の頃、トロンボーンを吹いていたから(実は吹かされていたから)管楽器の音は嫌いではない。下手でも耳に付かない。制服姿で吹いている子供たちの姿がリアルに想像できるから、その音にいとおしささえ感じる。
 あれは部屋の中で窓を閉めて吹いているのではない。開放した窓辺で、いやひょっとしたら庭で吹いているのかもしれない。集落を見下ろしながら少年が吹いているのだろう。
 草の燃える煙の香り、風に乗って聞こえるトランペットの音色、夕暮れ前にふと落ちて来た年の瀬の郷愁。

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