吹奏楽部

 コロナのせいで、クーラーをかけながら出入口は開放してと言う、非常にエネルギー浪費型の薬局だが、そのおかげでなんだか懐かしい音が聞こえてきた。
 目の前にある中学校の体育館で、おそらく吹奏楽部の部員たちが練習しているのだろう。個人練習と見えて色々な音色が無秩序に聞こえてくる。かつてトローンボーンを吹いていたせいか、さすがにその音は分かる。希望して入ったクラブでもないし、希望して担当した楽器でもない。当時力を持っていた音楽の先生のいわば強制入部だ。何年も行われていたシステムで、今だったら絶対に許さない。ただ当時幼かった僕は何もわからぬまま言われた通りに従い、場違いなところで3年間を過ごした。
 久々に聞いた吹奏楽の練習音だったが、当時は考えられないような楽器の音が混じっていた。そしてそれが妙に躍動していた。部員数がどうせ足りないくらいの過疎地のクラブだから、その楽器の音が余計耳に残ったのかもしれない。それはドラムだ。どのような子が叩いているのかわからないが、刻まれるリズムに乗って、仕事が少しはかどった。
 牛窓にあった高等学校が廃止になったころの中学生だったから、岡山市の高校に入ることだけを目標に中学校に通っていたような気がする。時代だから仕方ないとあきらめるにはもっていないほどの感性を封印させられた時代だったと思う。いくつの英単語を覚え、いくつの方程式を解くことよりも、もっともっと価値あることが世の中にはあり、それらにより早く接触できる余裕が社会にあればよかったのに。いや寛容があればよかったのに。

 

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