放物線

 自分のことを棚に上げてと言われそうなので、夕方ドッグランで石ころを投げてみた。さすがに大きな石はなかったから、バラスの中の一つの石でしかないが、嘗てのように少なくとも正面に向けて投げれた。おそらくこれが野球のボールでもスピードはともかく正面に向かって投げれると思う。
 ところがだ、信じられないような光景を朝のワイドショウで見てしまった。それはそれは衝撃だった。1球目を見た時には相手が女性の野球チームの選手だったから手加減して投げてあげたのかと思った。2球目は笑いを誘う演出かと思った。そして3球目を投げてから苦笑いか照れ笑いか分からないような笑いを残して交代したから、手加減でも冗談でもないことが分かり哀れに思った。
 60歳半ばになると、学生時代は怪童と呼ばれ、プロ野球時代には巨人のエースと言われた人でも、マウンドからキャッチャーまでまっすぐにボールを投げることが出来ないのだ。丸でやせ過ぎのアイドルのように、まるで小学生の女の子のように、3球とも天に向かって投げたのだ。天高く投げればやっとのことで放物線を描いてバッターまで届くと計算したのだろう。案の定やっと届いて女子選手に打たれていた。子供でも打てる球だ。
 横から見た体型も、お腹が出て全体的にも太っているのが分かる。嘗ての筋肉は期待できないだろうが、せめて筋肉の貯金は素人よりあったはずだ。どうやってあそこまで貯金を吐き出してしまったのか分からないが、嘗ての栄光もあてにはならないものだ。肩を壊したとかの決定的な理由もあるのかもしれないが、それにしても憐れなものだ。
 嘗ての美貌どこへやらのスターたちと同じ、過酷な運命だ。最初から持っていない者の気楽さはそうしてみると価値がある。失うものがない、究極の自由にあこがれる

『分断と凋落の日本』【ゲスト:古賀茂明】2023年11月17日(金)大竹まこと 室井佑月 古賀茂明【大竹メインディッシュ】 - YouTube