自己負担

 申し訳ない、申し訳ないと言って、処方箋を持ってきた女性が目薬5本を手にして言った。何が申し訳ないかと言うと、自己負担代が170円だったからだ。
 このように駄菓子1個分くらいの自己負担は、よくあることで、僕自身も患者さんに、「お菓子1個買うのと同じくらいじゃなあ」と言ったりする。そうしたギャグを飛ばすのは、意外と安いことを喜んでいる人は少なくて、気恥ずかしさとか、その女性のように、税金を負担している若い人たちに申し訳ないと思っている人が多いからだ。だからギャグで、そうした遠慮を薄めるようにしている。
 遠慮が少し薄まってくれたのか、最近の出来事を教えてくれた。これも自己負担のあまりの安さに戸惑った話だが、肺炎で10日間入院して自己負担が3万円だったらしい。1日3000円と割り算してくれたが、割り算で僕に何を伝えたかったのか分からないが、頭の中で比較するものがあったのだろう。
 この話には落ちがあって、10日入院しただけなのに、機能、特に頭の働きが自分でもわかるほど落ちたらしい。買い物に行っても何を買うのか全然思い出せない。品物の値段が想像つかない。出会った知人の名前が出てこない、などなど僕が忘れるくらいの体験を教えてくれた。
 僕がバレーボールをしていた頃対戦相手で何度か試合をしたことがある女性だから、80歳は越えているが、嘗てのママさんバレー選手も、10日間もベッドで過ごしたら、ここまで悲惨な状態になるんだと、教訓にするには恐ろしいものがある。
 ただし、今日の会話で回復しているのはよくわかり「今は韓国にも負けているのに、若者はなんで政治に黙っているんじゃろうな」と言いながら帰って行ったところを見ると、思考はかなりクリアで、選挙にも行かずに、貧乏を受け入れている若者達よりはるかに明晰な頭脳だった。

岸田内閣の支持率危機的水準。防衛増税の大義消滅。議員だけ給料アップ法案通過。止まらないスキャンダル。安冨歩東大教授。一月万冊 - YouTube