何種類かの薬を出して徴収するお金が、200円台とか300円台では気が抜ける。何か不自然だなとレジを打つ度に思っていたが、患者さん自体もやはり不自然さを感じているみたいだ。特に元々僕の薬局を利用してくれていた人達に同じ感想を持っている人が多い。  薬局を利用する人は基本的には経済的に恵まれている人が多い。と言うよりごく普通の収入はある人達だ。だから保険の自己負担分に丸を一つつけた程度の買い物は日常的にしている。僕はそんな人ばかり30数年応対してきたから、病気はある程度の投資をして努力して治すものと思っていた。ところが処方せんを持ってやってくる人達は、養生とか運動とかを余りしない。薬で何とかなると思っているのか、そもそも目標が完治ではないのか、気迫が伝わってこない。お金を出して薬を求めている人は、症状を抑えるのではなく治ってしまいたいと思っているから結構努力する。養生なども向こうから聞いてくる。ところが処方せんを持ってくる人達は、健康知識に興味も薄いしウォーキングすらしない。 今日もある老人に言われた。今月から後期高齢者になったらしくて、負担が1割に減った。今日処方箋で目薬を4本もらい払った金額が220円で、その時に「年寄りになったらえらい安いなあ。もうちょっととって。申し訳ないじゃないの。年寄りからもっと病院代や薬代を取るように国に言いたいわ」と言った。冗談ではなく真顔だった。  政治家は票が欲しくて不合理な制度に固執している。限りなく負担をゼロに近づけるほど人は感謝することを忘れる。権利だけを覚えた若い親たちの、礼も言えない不愉快さは日々目にするが、同じような老人の品のなさも目に余る。お金などにはとても換算できない品性がこの国から消えていく。