あまちゃん

 今年一番耳に残った言葉だ。なるほどなと感心した。決して洗練された言い回しではないが、緻密に用意されたことは容易に想像がつく。 夏ばあさんが、春子が再び出ていくときにかけた言葉だ。寂しいだろうと娘に言われ夏ばあさんは「大丈夫だ、一人暮らしには慣れている。出たり入ったりするから寂しいんだ」と答えた。何となく真実を突いていると思う。同じような経験は誰もがしているのではないか。家族でも会社でも学校でも、その他色々な組織や地域でも。人を見送るときの寂しさは、一人で暮らす寂しさの比ではない。と言うより、現代では一人で暮らすことが別に寂しさの象徴ではない。むしろ気楽とか自由の象徴の方にシフトしている。  ただひたすら働いてきただけだから、寂しいなんて感情を抱く状況はまるっきりなかった。ほとんどの人間関係は職業を介在していた。ところがこの数年、かの国の若い女性達と一緒に行動することが増えて、彼女たちの志などを知って、少しばかり役に立ちたいと思うようになってから、寂しさが身近になった。期限を切られての滞在だから、必ず3年で帰っていく。経済的な理由によって勉強の機会に恵まれなかった子が多くて、帰国してから大学に行くと目を輝かせるが、日本にいる間にも多くのものを見て感じて欲しいと思っている。労働に見合った報酬かどうか部外者には分からないが、牛窓で働いた3年間日本人に「とても大切にして貰った」と言ってもらえるように智恵と財布を絞っている。 この秋に又3人が帰っていく。そして又新しい3人が来る。「出たり入ったりするから寂しいんだ」