彼が東大の医学部に通ったと報告をしに来てくれた時に、この子も又、風邪ひきや高血圧や、ちょっとしたけがを治す便利屋さんになるのかと一瞬思った。僕なんか足元にも及ばない知能明晰な青年が、天下の東大医学部を出ても、患者にえらそうに言われ、誰でもできるようなことをするのかと、一抹の不安も覚えた。今度会う時は自分は先生になっているだろうけれど、僕のことを漢方の大先生と呼べよと言っておいたが、もう忘れているだろう。
 僕の懸念が杞憂だったことが今日分かった。彼の親類が漢方薬を取りに来て、お母さまからの伝言によると、帰国した教授と交代でアメリカに行っているらしい。この短い文章の中で、彼が誰にでもできるレベルの日常診療をしているようには思えない。元々ロボットに興味があって、頭脳について研究したがっていたのだが、ひょっとしたらあの頃の夢がかなえられているのかもしれない。
 彼は勿論だが、僕はお医者さんは少し便利屋さんにされているように思えてしょうがない。病院に行ったりしなくても自然治癒するようなものまで、世話をさせられているのを歯がゆい思いで見ている。元々優秀だった人達があれだけ勉強して、やることはこれか!と思うことが多い。あの資源をもっと高次の治療に集中的に生かさない手はないと思うが、お金に興味がある方々も多いと見えて、威厳の衣を脱ぎ捨てている。

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