嘘も方便

 お母さんに付き添って来たお嬢さん、と言っても昨年学校の先生を定年退職しているから、若くはないが、その方が、母親について「ベンリヨウツウ」と言った。朝の連続テレビドラマで、日替わりで変わる花の名前かと思った。僕は花については完全無知だから聞き返した。
 「どんな花?」と。すると女性は笑いながら「いえいえ、便利な時に痛くなる腰のこと」と教えてくれた。それですぐに「便利な腰痛」と相当する漢字が浮かんだ。僕が笑ったから、「お母さんは、なんか頼むと腰が痛いって言うんです」と解説してくれた。
 内臓は120年もつが、骨格は50年しかもたないようにできていると言われているから、世の壮年以上の人はほぼ皆さん腰痛持ちだ。腰だけでなく、膝や首も痛い人は多くいる。これらの痛みは、本人の訴え以外ではなかなか評価出来ないから、都合によって評価を使い分けることも可能だ。ただ多くの場合、痛くないのに痛いと表現するのが圧倒的だろう。ただし、それは恐らく悪意ではない。僕がもしその答えを選択するのなら、要求に応えて無理をして、より過酷な状況になり、運が悪ければ世話をしてもらわなければならないところまで行ってしまう可能性を危惧してのことだ。頼まれて出来ないと言う乾いた言葉を返すことはできるが、それで失う人間関係は大きい。それなら若干の後ろめたさはあっても嘘も方便の方が相手を傷つけにくい。
 出来ないことを婉曲に伝え、それ以上の負担を家族にかけまいと必死の母親に、悪意なく「ベンリヨウツウ」を口にし、老母を慈しむ娘の笑顔が輝く。

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