天秤

 雨が降った翌日は、草が根っこから抜ける。葉だけがちぎれて、努力が無になるようなことはない。だから雨上がりの朝は僕はつい張り切ってしまう。ただし僕の張り切りもしょせん10分くらい。地面が濡れているから片膝を付けなくて、目一杯腰に負担が来る。いや腰というより背中と言ったほうがいい。背中が板のように固くなり痛みを感じる。頑張ったおつりは結構つらくて、仕方なく仕事中鎮痛薬を飲んだ。
 痛みをこらえながら仕事をしていた。するとある親しい農家の方がやってきた。ここぞとばかり、草抜き後の背中の痛を訴えてみた。すると、あの姿勢はかなりこたえるそうで、「情けないやっちゃなあ」と言いながらも、そのあとはさすがにプロというか経験者で「痛い痛いでもやり続けてごらん、強くなって痛くなくなるから」と教えてくれた。
 僕はその言葉を聞くまで、なんとなく早く痛みから脱出しなければならないと思っていた。僕のぎっくり腰はほとんど動けなくなるくらい激しいから、それを誘発することを恐れていたのだ。ただ明らかに腰痛とは場所が違っていて、筋肉痛とはわかっていたが、治すのではなく、筋肉を鍛えるという方向性を示唆してくれたのが新鮮だった。なんとなくそれもありかなと思っていたので、その助言には勇気をもらった。痛い痛いと思いながらも作業をすればいいのだ。不思議なことにその助言をもたってすぐ痛みが少し軽減されたことに気が付いた。
 その助言をもらって始まった連休初日。電話で薬を所望されたので5回くらい薬局を開けて応対したが、その他の時間は薬の本を読むことと荒れ地を耕すことを交代しながら過ごした。備中鍬を使うのはまだ5分くらいが関の山だが、予想よりは筋肉痛が軽いような気がした。やはり彼の助言は当たっているのだろう。
 あと3日。草の根を地上にさらす快感と背中の筋肉痛を天秤にかけながら過ごそうと思っている。

 

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