土俵

 見るからに「本当に辛いだろうな」と感情移入してしまう。懸命にそれも丁寧に返事をしてくれるが、それさえ体力を消耗させているようで気の毒だった。体力に裏付けされる心も、当然落ちていて、毎日が歯がゆいだろうなと心が痛んだ。学校に行きたいのに行くことが出来ない。漢方薬や体力をつける天然薬がお役に立てれるが、多くは心療内科と言う選択肢をとる。
 僕のスタンスは、学校に行きたくても行けれないのは病気ではないと言うものだから、とにかく元気にしてあげる材料を選ぶ。治療と言う言葉は使いたくないし使えない。僕ら薬局は所詮「元気になっていただく」だけで十分だ。不調も病院にかかれば病気になる。僕はこんなに若い子を「病人」にはしたくない。
 親御さんの理解があったので、僕が使いたい漢方薬や天然材料の栄養剤を使うことが出来た。4か月かかったが昨日来た時に「学校に行っています」と素敵な笑顔で言ってくれた。極端に痩せていたが、若干ふっくらしてとても優しい表情だった。4か月前に初めて会った時にも優しさは伝わってきていたが、懸命に努力して維持している優しさだった。本来のほとばしるような優しさではなかった。思わず「顔が変わったね」と言ったが、健康になればこんなに印象が変わるんだと、僕の勉強にもなった。
 こうした出会いこそが僕の喜び。僕自身にはもう夢もないし希望もない。ただ前途だらけの若い人たちには、いつも土俵の上にいて欲しい。土俵から落ちるべきなのは君たちではない。

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