並大抵

 宅配のドライバーが、息子の所に届ける荷物を結構薬局に置いて帰る。薬局には毎日必ず配達があるから手間が省けるのだろう。僕も抵抗はない。時にこのようなおまけもあるから。
 金曜日に息子あてに届いた大きな荷物は、箱の底にクッションを貼り付けている珍しい包装のものだった。荷物を受け取ってから分かったのだが、外箱に西瓜の絵が描いていたから、西瓜なのだろう。
 岡山市の方だから、きっと息子の患者さんが気を遣って下さったと思うが、あまりの大きさに、1軒の家で食べるのは無理だと思った。まして果物を好んで食べない彼だから、気っと持て余すだろうと想像した。案の定、日曜日にドッグランのフェンスの山側の荒れ地を、ベトナム人に開墾してもらう時の水分補給に使わせてと頼んだら、即答でいいよと言ってくれた。
 日曜日の朝、薬局からドッグランに持って行くのにまず苦労した。スイカは裸では抱えられないくらい大きいから、箱に入れたまま運ぶことにしたが、腰に来そうな重さだった。ぎっくり腰でも起こしたら元も子もないから、かなり柔軟体操してから運んだ。
 冷蔵庫にいざ入れようとすると、棚を外してそれ用の空間を作らなければ入らない。ひとつの棚を外してやっと収まった。
 日曜日の午後、30分も戸外で力仕事をするとさすがに若くてもしんどいみたいで水分補給のために、ショップの中のクーラーにあたりに帰って来る。もう30分もしたころ、西瓜を切って皆に食べてもらおうとしたのだが、半分で十分すぎるくらい皆にいきわたった。そして種も少なく棚も割れていなくて、見るからにおいしそうなスイカは想像以上の味だった。ひょっとしたら僕が口にした西瓜の中では最高かもしれない。当然ベトナム人女性たちもその美味しさに感激していた。ベトナムにもスイカはあるらしく、もっと小さいと言って手で大きさを教えてくれた。日本のカボチャくらいだ。
 何の気なしに、ただ切ってくれたスイカを食べただけだが、今日になってそのスイカ鳥取県のものだと妻に教えてもらった。鳥取県のスイカと言えば毎年ニュースで初出荷の映像が流れるくらい有名だ。なるほどこのしっかりした形と大きさと味なら、ニュースになるのも分かる。
 牛窓のスイカもおいしいが、負けるような気がする。何もかも勝つ必要はないが、あのしっかりした美味しいスイカを超えるのは並大抵ではないだろう。

普通のマジック中に本名をさらっと言ったら絶対に気づかない説 - YouTube