必需品

 先月から何十年ぶりに僕の薬局の担当になった彼は、当然出世していて、会社のナンバーいくつかにはなっているらしい。が、それはそれで苦労もあるみたいで、毎週月曜日の朝は、西日本の売り上げの報告を社長にしなければならないらしい。数字が全ての世界だからなかなかのストレスで「心が折れそうになる」と言っていた。お互い若い時に、僕の薬局を担当していたから気心も知れていて、遠慮がない。だからつい本音を吐露してしまったのだろう。金曜日の夕方回ってきたのだから、もう何軒か薬局を回った後、広島に帰るのだろう。
 そんな彼が今日僕に紹介したのが、天然素材の新製品で、気疲れ、肉体疲労に用いる薬。「自分が飲んだ方がいいんじゃないの」と言うと、「さっき飲みました」と言っていた。毎週ズームで行われる会議、月に一度の東京での会議と、なかなか出世も大変なんだと、そういったシステムがない所で働いてきた僕にはほとんど他人事だ。
 一応用意してきた資料を説明した後彼が「先生の所で一つ記憶に残っていることがあります」ともったいぶって言うから何かと思ったら、それこそ30年くらい前に僕がリポビタンにはり付けていたポップのことだった。なんて書いていたのか当然僕は忘れているが、彼が教えてくれたところによると「大袈裟な宣伝が好きな方」と書いていたらしい。そんなこともあったかと笑ったが、当時の僕ならありうることだ。いや今でも大いにありうるが、いかにも僕らしい。
 必死に商売に精を出すタイプではなかったから、薬の販売と言うことには何となく気まずさと同居していた。ただなら飲ませたいが、お金を貰うのならためらっていた。
 漢方薬に出会って、相談者の要求通りに作るようになって、その後ろめたさとは無縁になり、薬局が楽しくなった。その分、彼が勤めているような製薬メーカーとも疎遠になっていった。ただしOTCにも捨てがたい優秀な商品は沢山あって、今でも僕の仕事には必需品になっている。病院に行っても治らない人、いや治らなくてもいいのかと勘繰りたくなるような人にも飲んでいただいて、それなりに結果を出せれている。
 町の薬局でも元気にできる人はいっぱいいるのに、歯がゆくて仕方ない。

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