苦笑い

 久しぶりに漢方薬を取りに来た子は、高校生になっていた。どこの高校を受験するのか、誰にも聞いたことがないから、当然僕は彼がどこの高校に進んだのか知らない。ただし、中学校の時にサッカーをしていたのは覚えていた。そこで最初の質問が、体調のことではなく「優勝パレードに出たの?テレビで見たよ」と言うと、「あれは隣の高校」と笑いながら答えた。隣の高校?サッカーで全国優勝した学芸館高校の隣?それですぐに通っている高校は分かった。
 熱心に中学からサッカーをやっていたから、その道もあったはずだが、勉強の方を重視したのかもしれない。それでもがっちりとした体格だから、サッカーを続けているようには見えた。聞いてみるとやはり続けていて、高校はそれなりに練習がハードで、自分の時間が取れないと嘆いていた。
 気の毒だったのは、サッカーの練習でミスをすると、隣の高校の塀の周りを罰で1周ランニングさせられるらしい。「滅茶苦茶、屈辱じゃん!」は僕の感想。その言葉に彼は苦笑いをしていた。
 「でも君の高校は鈴鹿王子がいたじゃろう。彼に学校で会ったの?」と尋ねると、会ってはいないらしいが、学校に来たから顔は見たらしい。「顔がめっちゃ小さかった」と最近の誉め言葉になるのか、どうでもいいようなことを教えてくれた。「女子がキャーキャー言ってました」と言うから「自分には言ってくれないの?」と尋ねると彼は苦笑いをしていた。
 全国制覇をしなくてもいい、顔が小さくてキャーキャー言われなくてもいい。このままさわやかな青年でいればいい。持って生まれたものが十分生かされている好感度抜群の青年だ。

世情 [Sejou] / 中島みゆき [Miyuki Nakajima] Unplugged cover by Ai Ninomiya - YouTube