五郎丸選手

 起きていても寝ているような人もいるのに、僕は寝ていても起きているような人間かもしれない。特に昨夜がそうだった。  ラグビーの五郎丸選手のお子さんを確かサッカーのスポーツ少年団で指導したことがある。試合会場に彼が昨日来ていたから直接本人に尋ねてみた。「確か五郎丸君のお子さんに僕はサッカーを教えていたよね」と。彼は微笑みながら肯定もせず否定もしなかった。僕は教えていたことに確信を持っているから、お子さんがどんな顔をしていたか思い出そうとしたが思い出せなかった。そうしているうちに目が覚めたが、その後も僕はしきりにお子さんの顔を思い出そうとしていた。  これは昨夜NHKの夜の番組で五郎丸選手のインタビューが行われ、それを見ていたせいだと思う。  砂浜から神社がつながっていて、足の裏に砂の感触が心地よい。参拝を済ませて帰ろうとしていたら、僕のチームでバレーをしていた人と会った。僕より随分若くて、岡山県の社会人チームで優勝するほどの実力の持ち主だ。久しぶりに再開して、軽く会話をした。どうしてこんなところにいるかと尋ねたように思う。いかにも不釣合いに思えたのだ。でも彼はっきりと答えなかった。ニコニコと笑っているだけだった。答えが聞けないまま目が覚めた。  これは昨日。備中国分寺の五重塔にかの国の女性達を連れて行ったことが影響しているのだと思う。半年くらい前に、倉敷で早島太鼓を聴いたときに、会場でいかにも場違いな彼を見つけて少し言葉をを交わしたことも影響している。昨日の総社の第九のコンサートとダブったのだと思う。  買い物の途中で雨が降り始めたので、仕方なくオートバイをスーパーの駐車場において帰った。雨が上がったのでとりに行かなければならないが、15kmくらいはなれたところだから歩いてはいけない。乗用車で行ってもオートバイは積めないしと思案していたら目が覚めた。目が覚めても当分考えていた。  これは、昨日時々冷たい雨が降ってきて、彼女達を雨に打たれさせてはいけないとかなり気配りしていたせいだ。  家に帰ってテレビを見ていると、横浜の姉と千葉の姉がテレビに出ていて、なにやらかけっこをしていた。横浜の姉が走り、千葉の姉がインタビューに答えていた。これは、昨日の第九のコンサートが夜のニュースで放映されたのを見ていて、僕は声援だけが放映されたことが影響していると思う。  人生の夢は何もなくなったが、夜毎夢はよく見る。ここには書かなかったが、ある人の漢方処方まで昨夜考えていた。起きていても寝ているような人間になってみたいものだ。