家族

 「オトウサンジャナイミタイ」と言われて、答えに窮した。  3女は1年前に来日して、僕の家には数回遊びに来ているが、ほとんど休日か仕事を終える時間帯だから僕がどんな仕事をしているのか見たことはがない。いつも事務所で話したり、2階で食事をとるくらいだから、僕のもっとも僕らしい?ところは知らない。語学学校が冬休みに入り、バイトが休みの日が昨日しかないということで、次女と2人でお昼ごろやってきた。クリスマスのミサで会った時に「姪が正月休みに入って人手が足りないから手伝いに来て」と半分冗談で言っていたら、半分冗談で手伝いにやって来た。  昨日は、店頭での相談、県外の人への漢方薬の送り、息子の処方箋調剤、全てが多かった。朝の9時に僕が漢方薬を作り始めて、一応その日に作らなければならないものを作り終えたのが午後の6時過ぎだった。(これは勿論例外中の例外で、僕の薬局が31日まで仕事をするとは知らなかった人が集中しただけ)結局、ひたすら食事もとれずに作り続けたのだが、それをずっと見ていた3女が不思議そうに言った感想だ。  「お父さんを、遊び人みたいに思っていた?」と言うと、笑ってごまかしていたが、それに近い感想を持っていたのかもしれない。何か頼めばほとんどのことをかなえてくれる便利なおじさんに思っていたのかもしれない。再来日の次女にくっついてきたのだが、弟を学校に行かせたいと言うけなげな目標を聞いて、それこそけなげに願いをかなえることを手伝うおじさんに思ったのかもしれない。  2人も勉強をするチャンスに恵まれていたわけではない。あまり深く尋ねると顔が曇るので僕はことさら興味を示さないが、日本とはレベルの違う貧困の中で育ったみたいだ。でもそれは決して不幸とは違う。それを証明する2人の純情と愛情と知識欲を感じるし、2人の発する笑顔は、ただただ僕を癒してくれる。  僕がお願いしたことを飲み込み早く、楽しそうに手伝ってくれる姿を見ていて、或いは声を聞いていて、嘗て僕は二人を世話することで心が満たされていたが、今は2人が存在することだけで満たされている事に気がついた。擬似家族かもしれないが、それもありと今でははっきりと言える。