新幹線

 休日は時間に余裕があるから、師匠の師匠にあたる方の講演テープ、実際にはCDを聴いている。日本屈指の漢方医であった先生だが、声はかすれて活舌が悪く、はなはだ聞き取りにくい。しかし、どんな宝みたいな知識が埋まっているかわからないので、懸命に音を拾っている。
 先週の日曜日に聞いた録音は、先生が関東の医師会に招かれて講演しているものだが、先生が話の中で「今日新幹線できたんですが、これで2回目ですわ。昔はトンネルに入ったら煤だらけだったんですが、今はきれいですな」と感嘆の声を上げていた。これは別に新幹線ができたての頃の録音ではない。新幹線が出来てから30年以上経っていた頃の講演テープだ。いかに先生が旅行をしなかったのかよくわかる。高名なお医者さんで患者さんはいっぱいおられて、まして難病の方が多かったはずだから、診察に明け暮れていたのだと思う。講演の中では、関西人らしくギャグが何度も飛び出し、楽しそうに話しておられた。
 そういえば、僕に漢方薬を教えてくださった師匠も、30年間講義をしていただいたが、どこかに旅行したと言う話は一度も出てこなかった。これまた関西の方だから、全く飾らない話を聞かせ続けてくださった。先生もまた薬局での楽しい逸話をいっぱい話してくださった。
 飽き性の僕がよくもこんなに続いたものだと思うが、教えていただいたことが本当によく効く処方だったこともあるが、笑いながら学べると言うことが僕を漢方薬につなぎとめてくれた。学術的で権威主義的な講師の方だったら、あっという間に僕は諦めていただろう。僕にはそういった方々への羨望の眼を持っていないから。
 お二人とも本当に人様を健康にするのが好きだったんだと思う。旅行より遊びより楽しかったんだと思う。お二人とも漢方薬の本を出版されているが、僕にはそんな芸当は出来ないから、時間だけはお二人より持っている。20年前くらいから日帰りのお出かけに明け暮れたが、先生の新幹線発言を聞いて、なんだか慰められた。世界中を旅してもいいくらいの高名な方が「新幹線が2度目?」良い師匠の師匠に音声上だけだが慰められた。

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