不眠

 処方箋を持ってきた女性は、毎日畑に出てよく働いている。80歳になるかならないかだが、いまだご主人と広い畑を守っている。野菜産地の牛窓でも有数の畑の広さを誇っている。とくに土が越えた地区に畑を持っているから品質の良い重量野菜を手掛けている。
 その女性が、体調はいいですかと言う僕の問いに「眠れんで困ってる」と言った。処方箋の患者さんだから、僕の守備範囲ではないが、息子が書いた処方箋だから一応不眠の程度を聞いてみた。すると「午後の8時ごろから布団に入ってテレビを見ているんだけれど、11時頃まで眠れない」と言った。それからはトイレの為に目が覚めることもなく朝の6時ころスッキリ目覚めるらしい。
 これを不眠とは言わない。世の中では「早う寝すぎじゃあ!」の世界だ。僕は女性に「起きとれ!」と言った。畑から帰っても、ご飯を食べてすんだらすることがないから、6時半ごろ風呂に入って、その後寝るそうだ。まだ世の中は働いている時間帯に食事をし、風呂に入る。そんな幸せなことはないから、「恵まれているだけじゃ!薬なんかいるもんか」と言うと、「先生も、同じようなことを言われて睡眠薬を増やしてくださらんかった」と言った。それを聞いてほっとした。息子もきっと同じような問診をしたのだろう。さすがに僕みたいな話し方はしないと思うが、これで患者さんに迎合して睡眠薬を増やしていたりしたら情けない。患者の要求を断ったみたいだからほっとした。
 ただこれがほかの病院からの処方箋なら僕もさすがに言葉を選ぶ。副作用見え見えなら介入もできるが、それ以上は介入できない。もっと好き放題言えれば分業も面白いもので有益なものになるだろうが、営業妨害の烙印でも押されそうなので、当たらず触らずで対処している。
 太ったり痩せたりしていた俳優が亡くなったニュースを見ていて、一つ中心に漢方薬を持ってきて治療をしていたら、もう少し活躍出来ていたんじゃないかと思った。農家のおばちゃんの件みたいに、ざっくばらんにそんな提案ができる関係がないと難しいだろうなと思いながら。

 

トゥルース!マスコミも政府も真実を隠している!最早、SNSにも真実は存在しない!だが、ここにはある!真実の入口に立った皆に祝福を!とぅる〜〜す♡安冨歩東大教授。一月万冊 - YouTube