仕事以外

 まさか飼い主さんも、そんな早朝に人が中学校の裏門の中に入ってくるとは思わなかったのだろう、遠くからわざわざ「オハヨウゴザイマス」と声をかけてくれた。僕を驚かさないために言ったのだろうが、実はある程度の距離があったのでそんなには驚いていなかった。ドーベルマン君は、堂々たる態度で、僕など完全無視状態だった。それよりもリードを外してもらって解放感に浸っていたのだと思う。ゆっくりと駐車場内を走っていた。
 邪魔をしたのはどうやら僕の方みたいで、僕が駐車場を抜けテニスコートに移ったときには、飼い主さんがリードを付けそそくさと裏門から出て行った。
 その裏門の道路を挟んだところに実はドッグランを作っていて、後はいくばくかの木を植え、真砂土で表面をきれいにするだけだと思うのだが、そこをどうぞと言いかけたがぐっと抑えた。開業まで、ただそこにあるだけ状態なので、自由に使って貰えばいいのだが、何分僕には権限がなくて、やることなすこと反対される。僕ら世代は世のため人の為と言う価値観がまだ残っているのだが、若い世代にはそれがあまりなくて、自分が中心と言うか大切なのだ。
 幸運にも、直接人のお役に立てれる仕事をしてこれたので、多くの方が実践されている「仕事以外」で、せめて最期はお役に立ってみたい。

 

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