超常現象

 僕は薬剤師だし、本来の合理主義的な性格から、超常現象などと言うものは信じない。テレビでその様な番組をやっていたら即座にチャンネルを変える。また、現れては消える泡みたいなその手のタレントの顔を見るのもいやな方だ。 ところが今朝起こったことは、僕の目の前1メートル以内のことだから全くあり得ないことが実際に起きてしまったと言うしかない。又それに驚くのでもなく、僕はあたかも何もなかったかのようにその後の行動を続けた。  以前にも書いたが、僕は毎日中学校の裏門から、重いレール式の扉を開けて不法侵入しテニスコートを散歩する。今朝は最近疲れ気味で睡眠が浅かったのか早く目が冷めてしまって、やっと明るくなるのを待っていつもより30分早く家を出た。テニスコートを30分も歩いていたら夜も完全に明けて、いつもの明るい時間帯になっていた。帰ろうとして裏門に近づくと、それこそ1メートル以内に近づいて、さっき数十センチくらい開け放していた扉に手を伸ばそうとした時、あの重い扉がゆっくりと動き出して勝手に閉まってしまったのだ。およそ少し体重をかけてやらないと動かないあの重い鉄のスライド式の扉が、勝手に動いて完全に行く手を塞いだ。 決して僕が寝ぼけているわけではない。まるで出ていくなと何かが押しとどめているような光景だ。でも僕は意外と何も考えずに手で門を開け道路を横切って帰っていった。  何でもネタにして儲けようとする輩だったら、のどから手が出るほど欲しがるだろう。携帯カメラででも写しておけば小遣いくらいになっていたかもしれない。でも僕はありもしない非科学的なことは信じない。見えない力のせいなどにはしない。だって、今朝はこの辺りとても風が強く、なんなく鉄製の重い扉を動かすのを見ただけなのだから。