後始末

 朝夕の散歩は、まず中学校の裏門から不法侵入して、体育館の前を通過してテニスコートに不法侵入する。こうした不法行為の連続で僕の健康は保たれているのだが、その僕でもそれはないだろうと思うことがある。 まず第一の不法行為場所の裏門についてだが、滑車がついているから困らないのだが結構重い重厚な扉が左右に開くようになっている。車が激突しても跳ね返しそうな素材だが、大人なら後ろ向きでも勢いよく締めることは出来る。ほぼ毎晩、大人のサークルが体育館をそれぞれの目的で使っている。中学校だから原則として門は常に閉まっているが、鍵はかかっていないから、スポーツのために集まる人達の中で最初にやってきた人が、車から降りて門を開くことになる。人が次から次に集まるから当然門は開きっぱなしだが、帰りは事情が違う。最後に出る運転手は、門から出たところで車から降りて手で締めなければならない。ところが、朝不法侵入しようとすると門が開いていることが増えてきた。これは明らかに前夜体育館を使った大人達が後始末をしていないから開いているのだ。最後の車の運転手が横着をしているのだ。 次の不法侵入場所でも同じ事がしばしば起こるようになった。ダンプカーでも通過できそうな入り口は、いつもは中側から簡単な鍵が締められているのだが、最近はその鍵がかかっていなくて、少し押すだけで簡単に出入りできる。ひどいときには、大きく開ききっているときもある。中学生が出入りする場所は、教室寄りの所で体を低くして入るような入り口なのだが、大人の利便性を考えて駐車場からさっきの大きな扉で入ることが出来るようにしている。しかし、当然のことだが利用後は中学生が使うことのないその扉は綻を締めて出入りが出来ないようにしておかなければならない。背を少し伸ばすだけで可能なことなのだが最近はほとんど扉は施錠されていない。  最後はテニスコート内のこと。僕は犬を2匹飼っていたから、犬の糞は分かる。どう見たって犬の糞が最近堂々とテニスコート内に残されている。毎日場所が変わっているからまさに散歩コースになってしまったのだろう。恐らく中学生が片づけようとした跡なのだろう、ちりとりの中に固まったウンチが集められていたりする。ほんの少し想像力があれば、愛犬が残していったウンチを中学生が片づけている光景くらいは容易に想像できるだろうが、まだ飼い主は気がついていないみたいだ。  これれはちょっとした区域で探し出した後始末の悪さの例え。恐らくエリアを拡大し時間を拡大すれば無限に見つけられるのではないか。始まりの準備はまだ楽しみが待っているから苦にならないのかもしれないが、宴の後はどうにも力を費やすことが苦手らしい。これは人の常ではあるが、ほんの少しの想像力とほんの少しの体力で乗り越えることが出来る。身勝手とか常識の欠如とか色々修飾する言葉はあるが、後始末が出来ないことほど始末が悪いことはない。