居場所

 居場所をなくした男達が入れ替わり立ち替わり裏門の外に出てくる様は寂しい。そこまでして吸わなければならないのかと尋ねてみたい気がするが、嘗てのヘビースモーカーにはその資格はない。 春休みの週末は、中学生のスポーツ交流に便利なのだろう、数台のバスが中学校の駐車場に止まっている。近くの学校らしき生徒達は父兄の車に便乗してやってくるのだろう、バスを囲むように自家用車が駐車場を埋める。かすかに体育館からのかけ声が聞こえるが、そこから逃げてくる父親達が、裏門を一歩出てタバコを吸っている。お互い会話することもなく、まるで釣り人達が護岸で一定の距離を保っているように見える。 タバコ吸いの居場所は段々狭くなっている。止めてからあの煙の臭さが初めて分かったが、長い間周りの人に迷惑をかけていたのだと反省しきり。それにしても昔は寛容だったものだ。吸う人の方が多かったから我が物顔だ。どのくらいの方に発ガン物質を吸わせたか分からない。 そこまでして吸うかと問いたくなるような追いつめられた環境で、徳俵に足をかけ懸命に耐えている男達の悲哀が紫煙と共に漂う。