薄幸

 遠方から、3匹の犬が楽しそうに走り回っているのが見えた。フェンスは出来上がっているから、脱走する心配はない。完成間近のドッグランで初めて実際に犬が戯れているのを見て、意外と人気が出るかもと思った。
 というのは走りまわっていたのは、娘夫婦が飼っている犬達だからだ。さっ処分寸前で引き取り、おまけに6匹も身ごもっていたワンちゃんで、野山以外の経験がない犬だ。人を極端に恐れて、親しくなるのにはかなりの苦労を要したみたいだが、娘夫婦だけは受け入れている。でも、僕など見るとやはり逃げてしまう。常に何かに怯えている。
 そんなワンちゃんが、広い場所を自由に走り回っている。まったく知らない土地で委縮していない姿を見たのは初めてだ。どれが母親でどれが子供か大きさに差がなくなったからもう分からないが、家族で楽しんでいる姿そのものだ。
 不思議なことに、僕がフェンスに近づくと、3匹も向こう側から近づいてきて、興味深そうに僕を眺めた。当然そこで吠えられると思ったが、なにもなかったかのように走り去った。
 その光景を見て、この1年間やってきたことが意味があったってことを確信した。薄幸の犬たちが、ひょっとしたら日本一幸せな犬になれたかもしれないから。

 

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