番組の最後に、どこかの大学教授が「能勢さんは岡山県の宝です。もっと大切にしなければなりません」と言っていた。そうか今や岡山県の宝なのだ。ただ能勢さんが何に秀でているかというと、その知性だろう。彼の知恵そのものが岡山県の宝なのだろう。
 昨夜1時間番組で能勢さんのドキュメンタリーが流された。数か月前の同じ番組で、三味線奏者の宇摩さんが取り上げられたから、同じ流れだろう。と言うのは、半世紀以上前に活躍した宇摩さんの父親と能勢さんは恐らく同世代。どちらも権力に抗して生きた人で、およそ現代に甦るような人ではない。その二人をRSKが敢えて取り上げたいのは何故だろう。マスコミが権力の太鼓持ちになって久しいが、そこに一線を画したいディレクターがRSKにいるのか。軟弱な東京のキー局に一矢報いたいような反骨精神を有する人が現れたのか。
 薬科大学に入ったのに、読んだ本は吉本隆明。難解さに戸惑いながらも、読みこなすことは快感だった。ただ、岡山に帰ってきて、ペパーランドに行き、能勢さんの文章に触れると、吉本隆明どころの難しさではなかった。もうほとんど異星人の言葉のようだった。理解不能。読む努力が報われないくらい難しかった。彼の紡ぐ言葉の出典を知るだけでおそらくかなりの労力を要するだろう。もうそれは僕などには不可能。優しくかいつまんで話してくれた時にのみ、会話が成立したような記憶がある。
 アンダーグラウンドの芸術を追及してきた彼を、現代がオーバーグラウンドに引き上げ、彼の力を欲している。おそらくディレクターの意図はそのあたりだろう。どのくらいの人が視聴したのか分からないが、裏通りから表通りを照らす灯りになって、彼のこだわり続けた岡山の街を照らしてほしい。

 

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