縁起

 縁起を担ぐタイプではないが、大工の棟梁が「今日は大吉の中でも一番いい大吉です。大吉にも段階があって、今日を逃したら当分来ないです」と、とつとつと話されると何かいいことが起こる、或いは悪いことを避けられるような気がするから不思議だ。その配慮になぜか感謝したくなる。
 もともと何の儀式もなく工事を始める予定だった。宮司にも連絡をしていない。ところがこちらの知らない間に、お札を頂いておいてくれたらしく、酒と塩での清めも行った。棟梁がこれから建てる建物の南を起点に決め、そこから一周する形で、要所要所を清めて回った。特に井戸は大切だからと残っていた酒をすべてそのあたりに注いだ。
 建物を作るのはこれで3回目だが、2回目までは35年以上前のことだからほとんど記憶がない。ただ当時は僕も若く、儀式なるものはすべて長老に教えられる通りと言うのが常道だったから、神主さんに拝んでいただいたと思う。いくら儀式が嫌いでも、大金をはたいての事業には縁も担ぎたかっただろう。
 多くの方の縁を感じながら、今日から建物の工事が始まる。小さな店舗だが、娘がかかわっての設計だからそれはそれで面白いものが出来るのだろう。
 僕は地域の年配方の心と体の健やかな日常に寄与したいが、娘たちはその点への興味はさすがに語らない。命を終える助走態勢に入っている人たちの一人でも多くに、一つでも多くの小さな小さな安らぎを贈りたい。

 

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