感動

 こんな感動が、手の届くところで起こる。この町で育ち、この町に帰ってきたことが、今更正しかったのだと思う。
 正式に昨日持ち主の方と契約を終えた。実はその時に知ったのだが、前日、700坪の土地(耕作放棄地)に除草剤をまいていてくれたのだ。連絡もなく「そっと」。
 それどころか1週間前には、長雨でイノシシをさえ隠すくらい伸びていた草を刈ってくれていたのだ。偶然息子が目撃していて「誰かが草を刈ってくれていたよ」と教えてくれていたのだ。当然売り主さんだ。
 普通ならもうハンコをつくのが分かっているのだから、草茫々で渡してもいいし、これからあっという間に草が生えても知ったことではない筈だが、当分草が生えないようにまでして譲ってくれたのだ。
 こちらが無理を言って譲ってもらったのだから、何らこちらに気を使ってくれる理由はない。しかし、おそらくご夫婦にとっては全く自然な行為なのだ。誰かが訪ねてきたときに、そっとお茶を入れてくれたり、「ご飯でも食べていかれえ」とつい言ってしまうようなご夫婦なのだ。
 この光景は母や叔母、或いはその上の世代のいわば心の身だしなみができていた人たちの所作だ。もはや我が家では見ることのできない光景だが、幸運にも縁あってこんなに近くの方に再現してもらった。幼いころしばしば父の薬局に通ってくれた、姉の同級生。ご主人は息子の患者さん。縁が映し出した感動の光景。

 

過敏性腸症候群、うつ病のご相談は栄町ヤマト薬局まで