立場


 僕と同級生の彼は、今月いっぱいで朝の新聞配りを辞めると言った。新聞配りのなり手が少ないから、辞めたらオーナーは困るだろうと言うと、さすがに体力がもたなくなったと言っていた。数回転んだりしてけがをしたのは知っているが、そのけがが確かにだんだん大きくなっている。
 そもそもかつては新聞配りは少年のアルバイトのように思っていたが、世の中が豊かになってからは、苦学生の定番ではなくなった。特に牛窓のように過疎の町になると、若者は少ないから年齢の高い人の仕事になった。
 辞める彼に「後釜は決まっているの?」と尋ねると「牛窓なんか年寄りがいっぱいいるんじゃから、あの人達に配ってもらえばいいんじゃ。わしが配っている時に、もう散歩している年寄りは結構おるよ。朝の4時ごろのにな」と、候補はいっぱいいると教えてくれた。
 月2万いくらの報酬があるみたいだが、年金が少ない人たちにとっては生活の足しになり有難いのではないかと思う。退職後30年も生きるかもしれない、年金はおそらく減らされる。老いてからでも稼がなければならない人はどんどん増えてくる。ボブディランが歌う様に「穴から空を覗くようなものさ」を地で行く声を上げない人たちこそが、皮肉にも超大金持ちたちの安泰と言う立場を支えている。