車間距離


 まるで教習所の交通事故の再現ビデオを見ているようだった。
 笠岡ベイファームの菜の花畑を見に行く道中のこと。笠岡の町中の、ある交差点で赤信号のために止まっていた。僕の前には乗用車が2台止まっていた。青になったから徐に各々が車を動かすが、左折しようとした先頭の車に、2代目の車がゆっくりと衝突した。僕の車はまだ正面を向いていたから曲がりかけた車を斜め後方から見る位置にいたので、ぶつかる瞬間までをすべて見ていたことになる。交差点で止まっていた車がゆっくりと動き出した挙句の事故だから、音も大したこともなく、あてられた車のへこみ様も大したことがなかった。原因は、横断歩道を渡ろうとした女性に気が付いて、先頭の車がブレーキをかけたことによるものだった。僕はその女性が視界には入っていなかったが、助手席に陣取っていたベトナム人が教えてくれた。オバアサンと言ったから高齢の女性だったのかもしれない。だとしたら小柄だから、存在に気が付かなかったのかもしれない。
 横断歩道のあたりで2台が止まったから、僕は対向車線に出て左折をしようとしたが、2台とも道路の左側によってくれた。冷静な処置だったので、円満に解決できたらいいなと思いながら、おそらく警察官を呼んだりしての事故処置に相当の時間を要するだろうなと思った。その時間の無駄に、何とも同情する。招かれざる時間の筆頭だ。
 後続車に責任があるのかどうかわからないが、車間距離と言う言い古された合言葉が大切だってことがよく分かったシーンだった。