一刀両断

 危なかった。予習しておいてよかった。結構ドライな評価を下すから、せっかくの好意が倍返しになるところだった。
 今週の日曜日、いつもならバイパスで一直線に倉敷に行くのだが、玉野近くまで南に下ったので、初めてのコースをナビに導かれていくことにした。すると思いもかけぬ光景に出くわした。恐らくそのあたりは児島湾を干拓してできた土地なのだろうが、水路に沿って走る道路のわきに満開の桜が延々と連なっていた。まだ3月半ばだから桜の満開、それも車で10分くらい走る距離に切れることなく桜が咲いている光景に驚いた。僕が知るサクラと違って淡いピンクどころか鮮やかなピンク、むしろ赤色に近かった。
 すぐに思ったのはベトナム人に見せてあげれば喜ぶだろうなと言うこと。花が好き?いや、花と一緒に映る自分が好きな女性たちだから、喜ぶこと請け合いだ。街路樹なら経費もかからないから、彼女たちも僕の財布も喜ぶ。
 そこで今日同じコースを走ってみようと思い出かけたのだが、わずか6日の間に様変わり。ほとんど花は残っていなかった。色褪せて尚、生き残った一部の花がサクラだったことを訴えるが、車を運転しながらでは、何の木か分からないほどだった。1年のうち何日花を咲かせるのか知らないが、この短命こそが哀れで、擬人化して思いを寄せるのかもしれない。
 もののあわれが理解できる民族ではなく、大陸で生き抜いてきた民族の生命力を持っている人達だから失敗は許されない。危ない危ない、ドライな評価で一刀両断にされるところだった。