COVID(コビット)

 このところ、色々な製薬会社のセールスが訪ねてくるたびに、口を開けば「売れない、売れない」のオンパレード。新人歌手か、新人の芸人か、新人の俳優か?
 もちろん彼らが売れないのは薬のこと。コロナと軌を一にしてそうした声を多く聞くようになったが、ひょっとしたらコロナ以前からかもしれない。ただコロナ1年目より今年の方が深刻らしくて、彼らの声のトーンは低空飛行だ。
 ただし、これは薬業界に特有の現象ではない。多くの業種に起こっている現象で、この時期に売れて売れて困っている業種は少ないだろう。時にワイドショーで取り上げられる業種もあるが、珍しいから取り上げられるのだからおおむね不景気なのだろう。
 僕は田舎でやっているから、基本的には世の動きとは連動しない。世が好景気でも牛窓は好景気でないし、世が不景気でも牛窓は不景気ではない。田舎の購買力などしれているので、そしてみな必要なものにしか出費しないから、波形は小さい。
 僕はパソコンがほとんどできないから、管理は漢方問屋の専務さんがしてくれている。僕はひたすら文章を書くだけだ。今日文章を送った時に、日水清心丸と言う薬をホームページの表紙に載せてくれと頼んだ。理由は現在41300円で買えている薬が、次回輸入が再開されると99000円になるのだそうだ。こんなもの買える人がいるのかと思って、自家用にキープしていたものを販売するようにお願いした。その時に僕は「売り上げ低迷で売れるものなら何でも売ります。こうなったら媚でも売ります」とメールすると、専務さんから返事が返ってきた。「その媚はいくらでしょうか?」
 僕をこんなに卑屈にしたのはやはり「媚っと」だったのだ。