被害者

 岡山県レベルでも感染者が出ていないのに、市の名前を通り越して、いや、もう一つ町の名前も通り越して、地元の人しか分からないような字名で「〇〇でコロナが出たらしい」と一人が言えば、「△△でも出たらしいよ」と言う。見ていて滑稽で哀れだが、それを諭しても仕方がないので「そんなことを言っていたら□□でも出とんじゃねえの(出ているのではないの)」と火に油を注いで場を盛り上げた。すると一人のほうは神経質だと見えて、えらい盛り下がった。
 その話を店頭でした男性は、農作物を産直の売店に卸している。毎日卸してはメールでどのくらい売れたか連絡をもらう。僕の目の前でメールが入ってきたりすることもある。その彼が言うのには、「コロナの影響で野菜が売れない」らしい。農作物、産直、牛窓、田舎とイメージを膨らませても「コロナのせいで農作物が売れない理由」は思い当たらなかった。コロナと接するような行動をする確率が低い田舎の人が、野菜を買うのをためらう必要があるのだろうかとしばし考えたが理由は思いつかない。彼が言い残して帰ってもう数時間たつが今だわからない。ひょっとしたら経済学者がよく使う言葉で「マインド」が冷えたのだろうか。マインド?初めて僕は使ったが、簡単に言えば「心」?心じゃあ格調が低くて彼らは金にはならないか。
 汚部が中国人の観光客の金欲しさに判断を誤ったせいで経済的に困窮する人が恐らく続出だろう。原発でやられコロナでやられ、いつまでこの国の人は被害者であることを自覚できないのだろう。