感性

 直接電話で、あるいはメールで、今年も合格の報告が届くようになった。本人はもとより、家族も肩の荷が下りただろう。
 僕が子育てをする頃には受験地獄などなくなっているだろうと思っていたが、むしろ深刻さは増していた。田舎で自分で出来る範囲の努力をすればよかった僕らの頃とは違って、商売で受験を手助けするところに依存しなければ勝ち抜けなくなっていた。僕は昔ながらの受験スタイルしか知らない親だったから、自力で乗り越えさせた。そして今はもっと激しいのか、あるいは人口が減って楽になっているのか、知る由もないし知りたくもない。ほとんど興味の対象外だから。ただ、受験から解放された気持ちはよくわかるし、目標の学校に入れた時の喜びもまざまざと思いだすことができる。
 僕が多くお世話している子供たちは、受験では大きなハンディーを持っている。それを少しでも軽減できたとしたら嬉しい。同じ条件で、戦わせてあげたいものだ。
 漢方薬が縁でお手伝いする機会は多いが、受験と言う選抜が、生涯を保証し続けることは出来なくなっている。東南海沖地震原発事故で、この国が終わるかもしれないのに、何年も丸覚えに時間を費やすのは勿体ない。感性を磨く機会と十分な時間を与えられ、スローに豊かに暮らした方が、幸せだろう。